テレビは今後どうなる?

テレビは今後どうなる?

テレビの接触時間

広告人として、どういうメディアを組み合わせると効果的なのかいつも考えていますが、今回はテレビについて調べてみました。

全体的にテレビの視聴率は以前と比べると下がっているようです。
では実際にテレビの接触時間はどのように変化しているのか調べてみました。全メディア(テレビ,ラジオ,新聞,雑誌,パソコン,タブレット端末,携帯電話・スマートフォン)の1日あたりの週平均接触時間は、2006年:335.2分だったの対し、2015年:383.7分と約50分増えています。
そういった中で、1日あたりのテレビの接触時間は、2006年:171.8分、2015年:152.9分と20分近く減っています。
メディア別接触時間の構成比をみるともっと明らかですが、テレビは2006年:51.3%、2015年:39.9%で11.4%のマイナス。デジタルメディア(パソコン,タブレット端末,携帯電話・スマートフォン)の合計は2006年:20.2%、2015年:44%と倍以上の伸びです。この勢いですと今年は全メディアの半分を超えるかもしれません。
わずか10年でのこの変化は、やはりスマホが大きく影響しているようです。
つまり、スマホの登場がテレビ離れを加速している一因とも言えます。

図:メディア総接触時間の時系列推移
(1日あたり・週平均):東京地区

出典:博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2015」時系列分析

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図:メディア別接触時間の構成比 時系列推移
(1日あたり・週平均):東京地区

出典:博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2015」時系列分析

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それでは、年代別ではどうでしょうか。
10代・20代の若者は、男女問わず携帯・スマホの接触時間がテレビの接触時間を上まわっています。特に20代女性はテレビの接触時間は約2時間ですが、携帯・スマホには3時間以上も接触しています。

この世代は、テレビを見るというライフスタイルが生活の中に存在していないのかもしれません。また、新聞も雑誌もほとんど読んでいないようです。
これに対し、50代・60代の女性は圧倒的にテレビの接触時間が長く、特に60代女性は4時間を超えており、20代男性の約2.5倍、20代女性の約2倍となっています。一概には言えませんが、番組にしてもCMにしてもターゲットをこの層にすると効果的なのかもしれません。

図:メディア総接触時間の性年代別比較
(1日あたり・週平均) 2015年:東京地区

出典:博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2015」時系列分析

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テレビの視聴率

「NHK紅白歌合戦」の視聴率が一番高かったのは1963年で、81.4%でした。NHKの視聴率は1%=100万人と言われていますので、全国で8,140万人の方が見ていたことになります。まさに国民的番組ですね。因みに昨年の視聴率は39.3%で過去最低でした。やはり日本人のライフスタイルが変わったということでしょうか。もっともこの数字でも他の番組と比較すると圧倒的に高いわけですが・・・。
他の音楽番組も以前はTBSの「ザ・ベストテン」41.9%を筆頭に20%を超える番組がたくさんありました。その番組を見ないとトレンドに乗り遅れるとさえ思ったものです。今では音楽番組自体が少なくなり、特別番組を除くと10%を超えているのは「NHK歌謡コンサート」や「NHKのど自慢」くらいです。若者は、テレビよりもYou Tube やニコニコ動画で音楽を楽しんでいるとも言われています。

それではドラマの視聴率はどうでしょうか?
「NHK朝の連続テレビ小説」で最も視聴率が高かったのは、1983年に放送された「おしん」です。平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%ですから凄いですね。1964年に始まった「朝の連続テレビ小説」は、コンスタントに30~40%の視聴率を叩き出していました。ところが2003年頃から20%を割るようになり、2009年には13%まで落ち込んでいます。2013年の「あまちゃん」は大きなブームとなりましたが、それでも平均視聴率は20.6%でした。現在放送中の「あさが来た」も非常に好評で、視聴率も24%前後と他のドラマに比べて圧倒的に高い数字ですが、以前のような30%は当たり前というものではありません。
また、1963年から始まった「NHK大河ドラマ」は、1987年の「独眼竜正宗」の平均視聴率39.7%を最高に、20~30%台で推移していました。しかしここ数年は低迷しており、2012年の「平清盛」からは10%代が続いています。そして昨年の「花燃ゆ」も12%で、「平清盛」と並び過去最低でした。

民放のドラマも以前は、1972年 TBS「ありがとう」の56.3%を筆頭に、 日テレ「熱中時代」、TBS「3年B組金八先生」、TBS「積木くずし」、フジ「ひとつ屋根の下」と30%を超える高視聴率ドラマがたくさんありました。ところが最近は低迷しており、ドラマ全体の約7割が1桁台です。今や10%を超えると高視聴率と言われています。2013年 TBS「半沢直樹」最終回の42.2%や2011年 日テレ「家政婦のミタ」最終回の40.0%は本当にもの凄い数字と言えます。
昨年末大きな話題になった「下町ロケット」でさえも一番高かった視聴率は最終回の22.3%でした。以前のような30%超えはなかなか難しいですね。

ただドラマに関しては大容量の録画機器の登場により、録画をしておいて週末にまとめて見るというスタイルも一般化しています。これは視聴率に反映されないので、一概にドラマの人気が落ちているとも言えません。 昨年の冬のドラマを例にすると、NHK「マッサン」は視聴率が最も高く23.2%でしたが、録画再生率は6.1%。これに対してTBS「ウロボロス」の視聴率は11.3%と「マッサン」の半分にも満たない数字ですが、録画再生率9.1%と同時期のドラマの中ではトップでした。録画してまで見たいドラマということになります。

面白いドラマは、リアルタイムで見られてもわざわざ録画して、CMをスキップして見ているという方もけっこういます。
録画視聴時のCMスキップの調査では、「いつもCMを飛ばす」が63%、「ときどき飛ばす」が25%、「CMを飛ばさない」は12%でした。
広告主は高視聴率の番組に高いCM料金を払うわけですから、スキップされてしまうと広告効果がなくなってしまいます。
視聴率のことだけを考えると、これからの民放の番組編成は、ドラマなどが減りリアルタイムで見なければ面白くないものが中心になっていくのかもしれませんね。

図:録画視聴時のCMスキップについて 出典:リサーチ・アンド・ディベロップメント

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