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■発地型観光と着地型観光
昨年11月に静岡市で開催された「全国商工会議所観光振興大会2015 inしずおか」に参加してきました。その中で東海大学観光ビジネス学科の宮内順教授による「歴史資源と着地型観光」というテーマの講演が非常に興味深かったので、着地型観光について調べてみました。
以前は旅行の多くは発地型観光でした。発地というのは旅行者が出発する地域のことです。この場合は大体都市部を意味します。旅行会社はたいてい発地にあることが多いため、そこから出発するパッケージツアー等を組んで観光地に送迎するわけです。また少人数で行く場合でも旅行者はガイドブックを頼りに観光するのが主流でした。つまり都市部で作られたプランで観光をするのが発地型観光ということになります。発地型ですと有名観光地だけに旅行者が集中し、その他の地域にある地域資源が活かされません。ますます地域間格差が広がっていきます。我々が知らないところにも素晴らしい地域資源があるはずです。
これに対し、着地というのは旅先のことです。インターネット等の普及によって着地の情報が簡単に得られるようになりました。個人で行ってみたい場所や食べてみたい食事等を調べ、自分のお気に入りの旅行プランを作れるようになったわけです。これが着地型観光です。最近の旅行会社の商品を見てもパッケージツアーというのは少なくなり、飛行機+ホテルだけであとはフリーというのが多いですね。
ここで重要になってくるのが、旅行者が行きたくような地域ならではのプログラム(地域資源を活かした旅行商品や体験プログラム、イベント等)をいかにして作るかです。また、宿泊を伴う地域滞在型のプログラムを作ることも重要です。宿泊があるとないとでは、その地域の経済効果が大きく違います。そのためには異業種間の連携がとても大切です。この連携により地域の魅力を活かしたプログラムを作り採算ベースにのせていく、また近隣地域とのネットワーク作りも必要になると思います。仮に一つの地域だけでは魅力が乏しい場合でも、他の地域との連携によって、強力な魅力のあるプログラムができることも考えられます。
そして、そうやってできたプログラムをどう発信するかも重要です。発信する手段は色々あると思いますが、例えばホームページの場合、ただ単に制作しただけでは、あまり見てもらえません。検索順位を上げるための方策をとることも必要になります。
観光庁のホームページに「観光地域づくり事例集2015~日本を元気にする地域の力」が載っていましたので、その中から栃木県の「宇都宮市」と岐阜県の「長良川流域」をご紹介します。どちらも異業種間の連携により成功した事例です。
「宇都宮市」の事例は「大谷石の採掘現場を利用した地下空間探検。採掘場内の地底湖をカヤックで進むクルージングや近隣の古民家、山里の自然等と組み合わせた着地型観光商品は予約が取れない程の人気」ということです。
また「長良川流域」の事例は「これまで観光と繋がりの無かった漁業や農業等の事業者と観光事業者が連携し、平成26年には140種類の体験プログラムを開催。その結果、地域ブランドが向上し、宿泊客も増加傾向にある。」ということです。
着地型観光は地域全体で取り組む必要があります。
観光の目的地を自分の地域にしてもらうにはどんな政策が必要か?地域の特性を活かし差別化を図らなければなりません。
以前から地方は高齢化やシャッター通り商店街などに見られるように衰退が目立っています。観光客を呼び込むことは活性化の大きな要因になります。
昨年の訪日外国人旅行者数は過去最高の約1,900万人となりました。これまでの行き先は東京~富士山~名古屋~京都~大阪というゴールデンルートが主流でしたが、最近はSNS等による口コミで地方にも足を延ばすようになりました。
例えば長野県の地獄谷温泉には温泉に入るサルを見ようと多くの外国人が訪れています。「Snow Monkey」という愛称で親しまれ、世界的にも有名らしいです。今では外国人向けのツアーまであるそうです。
動画がYou Tubeに公開されていますのでご覧ください。
外国人は旅行を計画する際にはSNSやYouTubeで情報を集め、行き先を決める場合が多いということです。是非、国内だけではなく海外にも情報を発信して着地型観光を成功させ、日本全体が元気になってくれればと思います。
神奈川県や横浜市でも皆で情報を交換・共有し、県内・市内の魅力的なプログラムを全世界に発信して、観光客を呼び込んで欲しいですね。