■日本は世界34位
前回は、「世界ビジネス環境ランキング」をご紹介しましたが、今回はスイスの有力ビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)が6月に発表した「世界競争力ランキング2020」をご紹介します。
このランキングは255の指標を用いて集計され、指標の64%は雇用統計や貿易統計といった公式定量データを基にし、残りの36%は、公式統計では把握しづらい「マネジメント慣行」「ビジネス規制」「労働市場」「姿勢・価値観」等の内容をIMDが実施する経営幹部意見調査「Executive Opinion Survey」の結果も踏まえて算出しているそうです。
それによると日本は調査対象63ヶ国中34位で、ビジネス環境ランキングよりも更に低く、東アジアの中でもシンガポール・香港・台湾・中国・韓国よりも低いというショッキングな順位でした。
図:世界競争力ランキング
出典:IMD World Competitiveness Rankings 2020より作成
「世界競争力ランキング」が最初に発表されたのは1989年のことで、日本は第1回から1992年の第4回までは1位を保ち、1996年までは4位以内でしたが、1997年に17位と急落してしまいました。1997年は山一証券や北海道拓殖銀行が経営破綻し、金融システムの不安が一気に表面化した年です。
その後、順位は上がることはなく、2018年までは20位台前後で推移、そして2019年には過去最低の30位となり、今年は更に低く34位となってしまいました。失われた20年と言われますが、まさに失われた30年です。
図:世界競争力ランキング日本の推移
出典:IMD World Competitiveness Rankings 2020より作成
評価が特に低いものとして「ビジネスの効率性に関するものがあげれていました。特に起業環境や国際経験は最下位となっています。起業環境については前回の「世界ビジネス環境ランキング」でご紹介したとおりです。
他にも
・経営慣行:62位
・デジタル技術:62位
・財政:61位
・生産性と効率:55位
・実質GDP成長率:54位
・国内への直接投資:52位
経営慣行に関しては、いわゆる「年功序列」「終身雇用」に代表される日本的経営に対する評価となります。これは昭和の高度経済成長期を支えた経営手法ですが、今の時代にはそぐわず、組織そのものが硬直化してしまうという意見も多くあります。世界的に見ればなかなか理解できない経営慣行なのかもしれません。
財政や実質GDP成長率に関しては、今回の新型コロナウイルスの影響で、ますます悪化するものと思われます。ただ全世界で悪化すると予想されますので、順位はどうなるか分かりません。
デジタル技術が62位というのはちょっと驚きでしたが、確かに新型コロナウイルスのPCR検査の結果をFAXで送っていることや給付金の申請にしてもネットよりも郵送の方が早いといった事実を見ると、日本はこんなにも遅れているんだということがひしひしと感じられました。
6月17日の日経新聞ではIMDのチーフエコノミスト、クリストス・カボリ氏が『日本は厳しい規制や高い法人税が起業を難しくし、外国からの投資も呼び込みにくくしている』と問題点を指摘しでいます。
また、三菱総合研究所は『日本の競争力向上に際しては、中長期的に評価の高い科学インフラの強みを生かすため、それを補完するビジネス効率性(生産性・効率性、経営プラクティス、取り組み・価値観)や政府効率性(ビジネス法制、社会的枠組み)の、生産性に関わる項目を幅広く一体的に改善していくことが妥当な方向であろう。』としています。
このままでは、日本はどうなってしまうのだろうと不安がよぎります。やはり前回の「世界ビジネス環境ランキング」で申し上げたとおり、政府はビジネス環境の早期改善をド真剣に考えて欲しいと思います。