■旅行・観光競争力ランキング
日本9位→4位(アジアでトップ)へ
一昨年、このコラムで日本の観光競争力をご紹介しましたが、あれから2年でどう変化したでしょうか。世界経済フォーラムが2017年の旅行・観光競争力ランキングを発表しましたのでご紹介します。
それによりますと日本は前回2015年の9位からアップして第4位。アメリカやイギリスを抜いてベスト5に入りました。2009年が25位でしたから8年間で大幅にアップしたことになり、アジアではトップです。
ベスト10をみますと、1位:スペイン、2位:フランス、3位:ドイツ、4位:日本、5位:イギリス、6位:アメリカ、7位:オーストラリア、8位:イタリア、9位:カナダ、10位:スイスという順でした。やはり欧米諸国が多いですね。
アジアでは日本に続いて11位:香港、13位:シンガポール、15位:中国、19位:韓国、26位:マレーシア、29位:アラブ首長国連邦、30位:台湾で、ベスト30に8カ国入っています。
図:旅行・観光競争力ランキング
出典:世界経済フォーラム
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ではどの分野がどう変わったのかをJTB総合研究所作成の表をもとに見てみます。
改善されたのは下記の10項目でした。
【旅行・観光関連に効果的な環境】から
「ビジネス環境」27位→20位
【旅行・観光関連の政策と状況】から
「旅行・観光の優先度」20位→18位
「国際的な開放度」16位→10位
「価格競争力」119位→94位
「環境の維持」53位→45位
図:旅行・観光競争指標2017
出典:JTB総合研究所HP
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【インフラ(社会基盤)】から
「航空インフラ」19位→18位
「陸上・港湾インフラ」19位→18位
「旅行者サービス関連インフラ」75位→29位
【自然、文化資源】から
「自然資源」30位→26位
「文化資源とビジネス旅行」6位→4位
この中で大きく伸びたのが「旅行者サービス関連インフラ」で75位から29位ですから46位もアップしています。
また、価格競争力については燃料サーチャージの削減や国内航空の外国人旅行者向け割引サービスを実現するなどの取り組みが功を奏して119位から25位アップして94位です。順位はかなり上がりましたがここはまだまだですね。
反対に下がったのは下記の4項目でした。
【旅行・観光関連に効果的な環境】から
「安全・安心」22位→26位
「保健・衛生」13位→17位
「人材と労働力市場」15位→20位
「ICT(情報通信技術の普及)」9位→10位
いずれもそれほど下がっているわけではないので問題ではないと思いますが、「安全・安心」はもっと上位かと思っていました。
■情報発信の仕方が「国のブランド」を大きく左右
この表にはないのですが、「国のブランド戦略」という指標で日本は2015年の2位から今回は42位と大幅にダウンしています。
これについてJTB総合研究所は『順位の低さは、国や自治体のサイトやSNSのアカウント上で十分な情報提供がされていない、あるいは情報提供がされていても旅行者にとって重要ではないコンテンツに偏っているといった可能性が示唆されている。このランクダウンには、例えば、もしかしたら国や自治体からの情報発信がウェブサイト中心で、SNSでの情報発信が進んでいない、あるいは発信している内容と海外からの旅行者が求めている内容が一致していない、といった可能性が隠れているかもしれない。』と分析しています。
これはとても重要なことです。よく分析をしてより有効な情報発信をして欲しいと思います。
また、世界経済フォーラムは評価が低いものとして、自然環境に対する配慮の不足を上げています。大気汚染源であるPM(粒子状物質)排出が93位、海産資源の乱獲が71位、危惧に瀕する動植物の増加が129位で、日本そのものの持続性の面からも心配だと指摘しています。これはちょっとショッキングですが、日本の将来を考えると大いに改善しなければならない問題だと思います。
なお、「客の待遇」が前回に続き首位でした。「おもてなし」への評価が高いのは嬉しいことですね。