■民泊の現状は
政府は訪日外国人数を2030年には6000万人にすることを目標としました。これには「民泊」が必須と言われています。
「民泊」は宿泊料を受け取る営業が常に行われていなければ、旅館業法の規制は受けません。しかし宿泊料を受け取る目的で常に部屋と寝具が用意されていると、旅館業経営となります。この場合、宿泊施設は防火設備や建物構造、衛生基準などが一定の基準を満たす必要があり、基準を満たしていない場合は違法です。現在行われている「民泊」の多くは違法だといわれています。しかし違法でありながらも、急増している観光客に対して宿泊施設が足りないため、あまり取り締まりは行われておりません。
これに対して、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会は、「急増する民泊を阻止しよう」というスローガンを掲げています。
旅館・ホテル業界は法律を守るために、これまで多額の設備投資を行ってきたわけですから、不公平感はかなりあると思います。
このような状況下で、政府はホテル不足解消の対策として「国家戦略特区」で旅館業法の規制を緩和するという政令を出しました。
民泊条例を制定できる「特区」は「東京圏」(東京都、神奈川県、千葉県)と「関西圏」(大阪府、兵庫県、京都府)の他、新潟市、福岡市、北九州市、仙台市、沖縄県、愛知県などです。
国家戦略特別区域法施行令で定められた主な「民泊」の条件は表の通りです。
図:国家戦略特別区域法施行令で定められた主な「民泊」の条件
出典:blogos.com
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神奈川県の黒岩知事は「国家戦略特区による民泊は有効性がある。可能な地域から特区の活用を進めていく」としています。
例えば県内有数の観光スポットである鎌倉には、宿泊施設があまりありません。条例により大きなホテルが建てられないことが主な理由だそうです。年間2,000万人を超える観光客が訪れる鎌倉に、宿泊する方は僅か2%。これでは地元への経済効果があまりなく、とてももったいないと思います。
観光立国を目指す日本としては、訪日外国人が増えてくれるのは、とてもありがたいことです。宿泊施設の不足を解消するために「民泊」も必要なことだと思います。
■民泊のメリットとデメリット
立場の違いによる「民泊」のメリットとデメリットを分かりやすくまとめたものが、「マンション・チラシの定点観測」というブログに掲載されていましたのでご紹介します。この表を見ると、それぞれメリットとデメリットがありますが、もしマンションの一室で「民泊」が行われた場合、そのマンションに住む住人とってメリットは何一つなく、デメリットが非常に大きいことが分かります。不特定多数が出入りする「民泊」は、安心・安全が確保できないだけではなく、資産価値が下がることがデメリットとなるわけです。テロリストの温床なる可能性も否定できません。
図:立場の違いによる「民泊」のメリットとデメリット
出典:マンション・チラシの定点観測
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ある大手不動産会社はこれから販売するマンションで、「民泊禁止」の条文を管理組合規約に盛り込んだ「民泊禁止マンション」の販売を発表しています。
訪日外国人が仮に1日2万円消費し、5日間滞在するとすれば10万円。1,000万人増加すると1兆円消費が増えることになります。日本の人口が減少する中で国内消費を増やしていくには、訪日外国人の増加が不可欠です。
これに対応するために、「民泊」の現状を踏まえて、旅館業法の見直しや条例の柔軟性、それによって起きる諸問題、諸外国の例を参考に早急に検討し、よりよい解決策を導き出していく必要があるのではないでしょうか。