IRの導入は是か非か?

IRの導入は是か非か?

IR推進法案

IRという言葉をご存知でしょうか?
統合型リゾート(Integrated Resort)の略称であり、その意味は「カジノ施設及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設の総称」ということです。これを推進するためのIR推進法案ですが、昨年いったん廃案になりながらも、今年の通常国会で再度提出されましたが、全く審議は進みまず、継続審議となりました。大きな理由のひとつが、カジノの解禁が含まれているためです。
カジノが解禁になるとギャンブル依存症が増えるという意見があります。ただ日本では、競輪・競馬などの公営ギャンブルや宝くじは認められています。

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図:日本で合法とされているギャンブル一覧

出典:大和総研「統合型リゾート(IR)構想と 検討課題」

日本のパチンコ市場は19兆円とも言われています。これに対してカジノの世界全体の産業規模は20兆円、実は日本は世界一のギャンブル大国なのです。
では実際にギャンブル依存症の人がどのくらいいるかというと、日本は成人人口の5.6%だそうです。海外と比べると米国:0.6%、カナダ:1.3%、イギリス:0.8%、オーストラリア:2.1%、マカオ:1.8%、シンガポール:2~3%ですので、日本が際立って高いことがわかります。
これだけギャンブルが盛んで依存症の割合も多い日本で、なぜ依存症への対策が積極的に行われてこなかったのでしょうか。

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図:ギャンブル依存症(病的賭博)患者の国別割合

出典:大和総研「統合型リゾート(IR)構想と検討課題」

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図:ギャンブル依存症(病的賭博)患者の国別割合

出典:大和総研「統合型リゾート(IR)構想と検討課題」

カジノは海外からの観光客誘致に対して効果的であり、地域活性化や産業振興の経済効果も見込まれます。
現在、カジノは海外では非常に盛んで100以上の国・地域に設置されており、G7で認められていないのは日本だけです。

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図:世界に広がるカジノ合法国

出典:横浜市「IR(統合型リゾート)等、新たな戦略的都市づくり」検討調査 報告書

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図:世界に広がるカジノ合法国

出典:横浜市「IR(統合型リゾート)等、新たな戦略的都市づくり」検討調査 報告書

IR 推進法案は、「先進諸国での成功事例を取り込み、厳格な規制・管理の下、透明性の高い制度設計を通じて、カジノの健全性、安全性を担保する」という考え方をとっています。
具体的には、
① 独立性を有する新たな監視・監督機関の創設
② IRが設置される総区域数を限定
③ 事業者選定にあたっては、公募プロポーザル方式を採用

7月に世界的なコンサルティング会社であるオックスフォード・エコノミクスが日本にIRが誘致された場合の経済効果について発表しました。それによると東京圏、大阪圏でそれぞれIRが建設された場合、消費支出(IRを訪問した内国人・外国人旅行客が消費した金額)は東京圏で2.2兆円、大阪圏で1.6兆円、雇用創出効果はそれぞれ103,000人、77,500人、税収は国税・地方税を合わせてそれぞれ4,700億円、3,400億円におよぶとされています。
非常に経済効果が大きいということです。

海外のIR事例

海外のIR事例を調べてみました。
やはり雇用の創出や税収効果は非常に大きなものがありますね。特にマカオでは2003年の失業率が6%だったものが、IRにより2012年に2%に改善されました。
また、IR全体の延べ床面積に対して、カジノの面積の割合は数%にとどまっています。しかし売上に占める割合は、4 割~9 割ですから、IR 全体の稼ぎ頭ということでしょうか。
また、各国とも外国人旅行者が大幅に増加しているようです。例えばシンガポールはIRオープン後、外国人旅行者が約1.5倍に増えていますし、観光収入も約1.9倍に増えています。
また、ラスベガスには年間約4千万人の観光客が訪れるということですから、IRの力は凄いですね。しかも殆どの観光客が宿泊を伴うわけですから、地元に落ちるお金も莫大なものだと思います。因みに2013年の神奈川県全体の宿泊観光客の延べ人数は、1,523万人でした。

出典:横浜市「IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり」検討調査 報告書

図:IR導入による効果

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出典:横浜市「IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり」検討調査 報告書

図:各国の主要IRの概要

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超高齢社会の日本は、経済規模が縮小していくことが懸念されています。今後も活発な経済活動を続けていくためには、訪日外国人の増加による観光収入の増加も必要なことです。海外の事例からもわかるように、IRの導入は観光収入の増加に大いに役立つという事ですね。
経済を優先するか社会問題を優先するか悩みの多いところです。