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スマートフォンやSNSが普及し、デジタル広告が主流となった現代。しかし、駅や街頭で目にする屋外広告(OOH)は、近年その存在感を増しています。従来の単なる広告掲示板から、デジタルサイネージやインタラクティブな展開まで、OOHは進化を続けているのです。
このように、人々の生活動線上で自然に目に入り、強いインパクトを残すOOHは、現代のマーケティング戦略において欠かせない存在となっています。今回は、そんなOOHについて詳しく解説していきます。
OOHとは

OOHとは、マーケティングの分野において、自宅以外で目にする広告全般を指す言葉として使われています。
OOH(Out of Home:アウト・オブ・ホーム)の意味
OOH(Out of Home)とは、その名が示す通り「家の外」で展開される広告メディアの総称です。通勤・通学途中の電車内や駅構内の広告、繁華街の大型ビジョン、バス停のポスター、タクシーの車体広告など、私たちが日常生活で目にする様々な広告媒体が含まれます。
テレビやインターネットなど家庭内で接触する広告とは異なり、人々の行動動線に沿って自然な形で情報を届けることができる点が特徴です。近年では従来の静止画や映像による表示だけでなく、デジタルサイネージやスマートフォンと連動したインタラクティブな広告など、技術革新によってその形態は多様化しています。
購買行動に直結する場所での訴求が可能なため、マーケティング戦略において重要な位置を占めています。
DOOH(Digital Out of Home)との違い
OOHが屋外広告全般を指す広義の概念であるのに対し、DOOH(Digital Out of Home)はその中でもデジタル技術を活用した広告媒体に特化した概念です。
従来のOOHが看板やポスターなどの静的な表示媒体が中心だったのに対し、DOOHはデジタルサイネージやLEDビジョンなどのデジタルディスプレイを使用し、動画や変化する映像を表示できます。
OOH広告の種類

OOH広告の種類を大きく分けると、以下の3つです。
- 交通広告
- 屋外広告
- その他
交通広告
交通広告は、通勤・通学客を中心に多くの人々が利用する公共交通機関を活用した広告媒体です。駅広告には、駅構内のデジタルサイネージ、改札付近の看板、ホームの柱や壁面に設置されたポスター、階段や通路の広告など、駅施設のあらゆる場所を活用した多様な形態があります。
一方、車両広告では、電車やバスの車体外面に施されるラッピング広告、電車内の中づり広告やドア横ポスター、車内モニターでの映像広告などが展開されています。
これらの広告は、日常的な移動時間という確実な接触機会を活かし、長時間かつ繰り返し露出できる特徴があり、商品やサービスの認知度向上に効果的です。
屋外広告
屋外広告には多様な形態が存在し、それぞれが異なる特徴と効果を持っています。建物の壁面や屋上に設置される看板広告は、高い視認性と長期的な露出が特徴で、ブランドの認知度向上に効果的です。
繁華街や駅前に設置される街頭ビジョンは、大画面で鮮やかな映像表現が可能で、多くの通行人の注目を集めます。デジタルサイネージは、時間帯や視聴者に合わせて表示内容を変更でき、店舗やオフィスビルのエントランスなど、様々な場所で活用されています。
移動式の広告媒体であるアドトラックは、特定のエリアや時間帯を狙って広告を展開できる機動性が強みで、イベントやキャンペーンとの連動も容易です。
これらの屋外広告は、都市空間における重要なコミュニケーション手段として機能しています。
そのほかの広告
そのほかのOOH広告としては、チラシやポスターも知られています。チラシは主に新聞折り込みや店頭配布、ポスティングなどで配布され、商品やサービスの詳細情報、価格、セール情報などを消費者に直接届けることが可能です。特に小売業やサービス業においては、地域に密着した販促ツールとして重要です。
一方、ポスターは駅や街頭、店頭など人目につきやすい場所に掲示され、シンプルかつインパクトのあるビジュアルと簡潔なメッセージで、商品やブランドの認知度向上を図ります。両者とも制作コストが比較的低く、ターゲットとする地域や場所を細かく選定できる利点があり、現在でもマーケティング戦略の重要な要素として活用されています。
OOHの市場規模

デジタルサイネージを中心としたOOH市場は、着実な成長を続けています。株式会社デジタルインファクトとCARTA HOLDINGSの共同調査によると、2023年のデジタルサイネージ広告市場は801億円(前年比119%)に達し、2027年には1,396億円規模まで拡大すると予測されています。新型コロナウイルスの影響から回復した現在、特に渋谷や新宿といった都市部での需要が高まっており、地方都市への展開も期待されています。
さらに、コンビニエンスストアなどの小売店舗におけるデジタルサイネージの設置も進んでおり、リテールメディアとしての活用も拡大傾向です。加えて、プログラマティック広告取引の導入や新たなマーケットプレイスの設立など、技術面での革新も市場成長を後押ししています。
参考:PR TIMES|デジタルサイネージ広告市場調査を実施
OOHの特徴とメリット

OOH広告は、私たちの生活に密着した広告媒体として、多くのメリットがあります。
視覚的なインパクトのある訴求ができる
OOH広告のメリットとしてまず挙げられるのが、視覚的インパクトの訴求ができることです。駅前の大型ビジョンや高速道路沿いの大型看板など、大きなスケールで展開される広告は人々の視線を自然と引き付け、強い印象を残せます。
特に都市部の交通要所に設置された巨大なデジタルサイネージは、鮮やかな映像や動きのある表現で、通行人の注目を集めることが可能です。また、広告サイズが大きいことで、商品やブランドのディテールを魅力的に表現でき、記憶に残りやすいメッセージを届けることができます。
このような視覚的な訴求力の高さは、ブランド認知度の向上やキャンペーンの周知に特に効果を発揮します。
広範囲に露出できる
OOH広告の最大のメリットは、圧倒的な露出力でしょう。街頭や駅、バス停、商業施設など、人々の日常的な行動導線上に設置されるため、通勤・通学、買い物、レジャーなど様々なシーンで自然な形で広告メッセージを届けることができます。特に都市部の繁華街や主要駅では、一日数万人から数十万人という膨大な通行人に対してリーチが可能です。
消費者が意識的に広告を避けることができないという特性も、高い認知効果につながっています。
多様なターゲット層にアプローチできる
OOH広告のメリットには、リーチの広さと多様性も挙げられます。駅や繁華街、商業施設など、人々が日常的に行き交う場所に設置されることで、通勤・通学中のビジネスパーソンから買い物に出かけた主婦、休日を楽しむ若者、観光で訪れた旅行者まで、年齢や性別、職業を問わず幅広い層へのアプローチが可能です。
特に都市部では、同じ場所でも時間帯によって通行する人々の属性が大きく変化するため、一つの広告媒体で複数のターゲット層にリーチできる効率的な広告手段となっています。
オフラインとオンラインの連携ができる
OOH広告の強みは、オフラインとオンラインの広告を効果的に連携できる点にあります。例えば、デジタルサイネージやポスターにQRコードを設置することで、通行人をそのままウェブサイトやSNSへと誘導することができます。
また、位置情報と連動したスマートフォン広告と組み合わせることで、OOH広告を目にした人に対して、その後タイムリーにデジタル広告を配信することも可能です。このクロスメディア戦略により、消費者との接点を増やし、より深い商品理解やブランド認知を促進できます。
さらに、デジタル広告との相乗効果によって、購買行動に至るまでの消費者の意思決定プロセスを効果的にサポートできます。
OOHのデメリット

OOH広告は、その高い視覚的なインパクトや幅広いリーチ力など、多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。
費用が高い
OOH広告のデメリットは、まず高額な費用でしょう。特に、人通りの多い都心部や主要駅などの一等地に設置する場合、広告枠の賃料は著しく高額になります。例えば、渋谷や新宿といった繁華街の大型ビジョンでは、月額数百万円から数千万円の費用が必要となることも珍しくありません。
また、デジタルサイネージの場合は、機器の設置費用や保守管理費用も発生します。さらに、広告制作費や運用費用なども考慮する必要があり、中小企業にとっては大きな投資です。このような高コストは、広告主の参入障壁となり、費用対効果の測定も重要な課題となっています。
効果測定が難しい
OOH広告の課題として、広告効果を正確に測定することの難しさも挙げられます。インターネット広告では、クリック数、滞在時間、コンバージョン率など具体的な数値で効果を把握できますが、OOH広告では通行人が何人広告を見たのか、どの程度の印象を持ったのか、購買行動につながったのかを正確に追跡することが困難です。
近年では、カメラやセンサーを活用した視聴者測定システムや、スマートフォンの位置情報を利用した接触計測など、新しい計測技術が導入されていますが、依然として完全な効果測定は課題となっています。そのため、広告主は投資対効果(ROI)を明確に把握することが難しく、広告予算の最適な配分を決定する際の判断材料が限られてしまいます。
OOH広告の媒体の選び方

OOH広告の媒体選びは、広告の目的、ターゲット層、予算など、様々な要素を考慮して行うことが必要です。最適な媒体を選ぶことで、より高い広告効果が期待できます。
ターゲット層
OOH広告の媒体選定において重要なのは、ターゲット層の明確な設定です。例えば、若年層をターゲットとする場合は、大学周辺や若者の集まる繁華街、ファッションビルなどの広告スペースが効果的です。一方、ビジネスパーソンをターゲットとする場合は、オフィス街の駅構内や電車内の広告が有効でしょう。
また、主婦層をターゲットとする場合は、スーパーマーケットやショッピングモール内のデジタルサイネージが適しています。このように、ターゲット層の生活動線や行動パターンを詳細に分析し、それに合わせた広告媒体を選択することで、より効率的な広告展開が可能です。的確なターゲティングは、限られた広告予算で最大の効果を得るための重要な戦略となります。
目的
OOH広告の媒体選定において、広告目的の明確な設定も重要です。例えば、新規ブランドの認知度向上が目的であれば、繁華街の大型ビジョンや駅の主要動線上のデジタルサイネージなど、多くの人々の目に触れる媒体が効果的です。一方、商品の購買促進が目的であれば、店舗近くや商業施設内のポスター、デジタルサイネージなど、購買行動に直結する場所での広告展開が適しています。
また、高級ブランドのイメージアップを図る場合は、ターゲット層が多く行き交う特定エリアや、ブランドイメージに合致する洗練された広告媒体を選択することが重要です。このように、広告目的に応じて最適な媒体を選択することで、より効果的なOOH広告展開が可能となります。
予算
OOH広告の媒体を選ぶ際は、予算も重要な判断基準です。デジタルサイネージや大型ビジョンなどの最新のデジタル媒体は高額な傾向にありますが、従来型のポスターや看板は比較的低コストで実施できます。
また、掲出期間や場所によっても費用は大きく変動します。例えば、繁華街の一等地では高額になりますが、住宅地や地方都市では比較的手頃な価格で展開できます。
限られた予算でより効果的な広告を実現するためには、ターゲット層の行動パターンを分析し、費用対効果の高い場所や時期を選定することが重要です。さらに、季節や時間帯によって料金が変動する媒体もあるため、これらの要因も考慮に入れた戦略的な予算配分が必要となります。
地域
OOH広告媒体を決めるときは、地域選定も慎重に行わなければなりません。広告を展開したい商圏や、ターゲット顧客が多く集まるエリアを綿密に分析し、最適な場所を選ぶことが必要です。
例えば若者向けの商品であれば、大学周辺や若者の集まる繁華街、ビジネスパーソンをターゲットとする場合はオフィス街や主要駅周辺、ファミリー層には住宅地近くのショッピングモールなど、それぞれの目的に応じた立地選定が求められます。
また、地域特性や人口動態、通行量データなども考慮に入れ、より効果的な広告展開が可能な場所を見極めることが重要です。コストと期待される効果のバランスを考慮しながら、最適な地域戦略を立てることが成功への鍵となります。
期間
OOH広告における期間の選定は、キャンペーンの成功を左右する重要な要素です。商品やサービスの特性、キャンペーンの目的、予算などを考慮しながら、最適な掲載期間を設定する必要があります。
例えば、新商品の認知拡大を目指す場合は、ターゲット層への十分な露出を確保するため、最低でも2週間から1ヶ月程度の掲載期間が推奨されます。一方、季節商品やイベントの告知では、開催時期に合わせて集中的に露出する短期間の掲載が効果的です。
また、駅や繁華街など、同じ人が繰り返し通過する場所では、継続的な露出による累積効果を考慮して、より長期的な掲載期間を検討することも重要です。
OOHの活用事例

OOH広告は、その高い視覚的なインパクトと幅広いリーチ力を活かし、様々な業界で活用されています。ここでは、具体的な活用事例をいくつかご紹介します。
新商品のプロモーション
新商品のプロモーションにおいて、OOH広告は強力な認知度向上ツールとして活用されています。特に、通勤・通学者や買い物客が集中する駅周辺や繁華街に設置された大型ビジョンは、多くの人々の目に留まりやすく、インパクトのある商品訴求が可能です。
例えば、スマートフォンの新機種発売時には、渋谷スクランブル交差点の大型ビジョンで製品の特徴的な機能を動画で紹介したり、新作コスメの発売時には、新宿駅周辺の複数のデジタルサイネージで商品の使用感や色味を訴求したりするなど、視覚的な魅力を最大限に活かした広告展開が行われています。さらに、SNSと連動したキャンペーンを実施することで、オフラインからオンラインへの誘導も図れます。
ブランドイメージ向上
OOH広告は、ブランドイメージの向上において特に効果的な手法としても知られています。例えば、高級ブランドは銀座や表参道といった洗練された商業エリアに大型の広告看板を設置することで、ブランドの格調の高さや憧れの価値を効果的に演出しています。
また、駅や空港などの特定エリアに、上質なデザインや素材を使用した広告を展開することで、そのロケーションが持つステータスとブランドイメージを重ね合わせることが可能です。さらに、都市の象徴的なランドマークや文化施設周辺での広告展開は、その場所が持つ文化的価値や洗練された雰囲気とブランドを結びつけ、消費者の心に上質で信頼できるブランドとして印象付けられます。
イベント告知
OOH広告は、イベント告知において特に効果的な宣伝手段の一つです。例えば、音楽フェスティバルや展覧会では、渋谷や新宿などの大型街頭ビジョンで迫力ある映像や視覚効果を用いた広告を展開し、通行人の注目を集めています。
また、都市部を走行するラッピングバスやタクシーは、イベントのビジュアルやロゴを大きく掲載することで、広範囲に渡って認知度を高めることができます。
特に、イベント会場周辺でのOOH広告展開は、開催地へ向かう人々への直接的なアプローチとなり、来場意欲を高める効果があります。さらに、デジタルサイネージを活用することで、イベントまでのカウントダウンやチケット販売状況など、リアルタイムな情報提供も可能です。
まとめ
今回は、OOH広告について解説してきました。OOHは家庭外で展開される広告メディアの総称で、交通広告や屋外広告、チラシなど多様な形態がありますOOHの主なメリットとしては、視覚的なインパクト、広範囲への露出、多様なターゲット層へのアプローチ、オフラインとオンラインの連携が可能な点です。一方で、高額な費用と効果測定の難しさがデメリットとして存在します。効果的なOOH広告の実現には、ターゲット層、目的、予算、地域、期間などを総合的に考慮した戦略的な媒体選定が重要です。新商品プロモーション、ブランドイメージ向上、イベント告知など、様々な目的で活用されています。
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