
先日、丸の内にある三菱一号館美術館で「ルノアールとセザンヌ展」(すでに終わってしまっています)を観てきました。この美術館自体、三菱が建てた最初の古いレンガ造りのビルなので、ビルを見るだけでも楽しめます。さらにはこの周りのビル群は、バブルの時に三菱地所さんが建てたものばかりで、贅沢な空間が配置されています。お薦めスポットです。
美術館に行くと、私は大体イヤホンの解説を聞きながらアートを鑑賞するということをするのですが、今回は詳しい人がいたので、その方の解説を聞きました。
1.年齢別に絵画を観察する
ルノアールは1841年生まれ。セザンヌは1839年生まれです。お互いに家族ぐるみの付き合いをしていたようです。ほぼ同じ年なので、二人が1840年生まれとして絵を鑑賞しました。
面白いことは、年をとってくると、皆が知っている画風に近づいてくること。語弊はあるかもしれませんが、皆が知っている画風で、売れる絵になってくることです。
例えば、ルノアールの42歳の時の絵は、女性の肌が白くてきれいです。実物に近い描き方になっているのだと思います。しかし、当時この絵を見た人は、「肌が透けるように白くて、気持ち悪い」と批評したのだそうです。青く血管が浮き出しているところまで描かれているからです。そこで誰にでも受け入れられるように進化させて、54歳の絵のように肌がちょっとピンクっぽい色になっているのだそうです。ルノアールの絵が、晩年見やすい肌の色になっているのはこのためなのです。売れる絵を描いているといってもいいでしょう。

2.素材の技術革新で見方、描き方が変わる
もう一つ面白い話を聞きました。印象派のあの点描のような描き方は、絵の具の素材が進化したからだということです。チューブに入った絵の具が売られるようになり、パレットに絵の具を出して、絵の具が混ぜやすくなったからこそ筆先に必要な量の絵の具を乗せて、点を打つようにキャンパスに色を乗せることができたのだとのことでした。すごく興味深い話だと思いませんか?
3.写真が絵画に与えたインパクト
何と言っても写真の出現が絵の世界には大きなインパクトがあったのでした。それまで肖像画と言えば、宮廷画家に描いてもらっていたのが、写真に変わったことは皆さんご存知の通りです。絵も自然に見えるという描き方があったのですが、写真の出現でそれも変わってしまいました。セザンヌの静物画がまさにそれ。よく見ると花瓶の後ろのお皿の縁のラインが合っていないし、大きさも何気におかしくないですか?でも実際見ると何の違和感もないというところが面白いところです。
4.その他
この他にも誰に影響を受けた描き方なのかを探るのも面白いし、こちらの美術館はさりげなく廊下に広告が掲示してあるなど、あちこち見ていると面白いことばかりです。

最後になりますが、次の三菱一号館美術館の展示会は10月11日(土)から「アール・デコとモード」https://mimt.jp/ex/artdeco2025/ というタイトルの服飾展示会です。是非こちらも見に行かれたらいかがでしょうか。