
■「医療情報取得加算」とは
この医療情報取得加算は、患者さんがマイナンバーカードを健康保険証として利用(通称:マイナ保険証)し、医療機関が患者さんの過去の医療情報を取得・活用する体制を整えた場合に、医療機関が診療報酬に加算できる制度です。
簡単に言えば、「患者さんが自分の医療情報を医師に提供することに同意し、その情報が診療に役立てられること」に対して、国が医療機関を評価し、診療報酬として加算する仕組みです。これは、医療のデジタル化を推進し、より質の高い医療を提供するための重要な一歩と位置づけられています。
■なぜ「マイナ保険証」が重要なのか?
マイナ保険証を利用すると、オンラインで過去の医療情報にアクセスできるようになります。具体的には、薬剤情報(処方された薬の履歴)や特定健診情報(特定健康診査の結果)などが、医師の面前で画面に表示され、診療に役立てることができます。これまでの医療では、患者さんが複数の医療機関を受診した場合、医師は他の病院での診療内容を把握することが困難でした。患者さん自身が口頭で伝えたり、お薬手帳を持参したりする方法が一般的でしたが、情報が不正確だったり、抜けがあったりする可能性がありました。マイナ保険証を活用することで、医師は患者さんの包括的な医療情報を正確かつ迅速に把握できるようになり、より適切で安全な医療を提供することが可能になります。
●具体的なメリット
・薬剤の重複や飲み合わせをチェック
複数の医療機関を受診している場合、それぞれで異なる医師が薬を処方するため、同じ成分の薬が重複したり、一緒に飲むと副作用が強くなるような薬の組み合わせ(相互作用)が生じたりするリスクがありました。マイナ保険証を使えば、医師は患者さんが過去に処方された全ての薬の情報を確認できるため、これらのリスクを未然に防ぎ、患者さんの安全を守ることができます。
・健診結果を参考にした、無駄のない検査や治療の提案
過去の健診情報(血糖値、血圧、コレステロール値など)が共有されることで、医師は患者さんの健康状態の推移を把握できます。これにより、すでに実施済みの検査を繰り返すことなく、本当に必要な検査や治療を提案することが可能になります。患者さんにとっては、時間と費用が無駄にならず、効率的な医療を受けられるメリットがあります。
・正確な情報に基づいた、スムーズな診療の実現
初めての医療機関では、問診票に記入する情報だけでは不十分な場合が多く、医師は限られた情報で診断や治療方針を立てなければなりませんでした。マイナ保険証を活用すれば、過去の受診歴、病名、手術歴などが正確に把握できるため、より的確な診療を行うことができます。これは、診断の精度向上だけでなく、診療時間の短縮にもつながります。
●初診時の不安軽減について
・安心感::自分の医療情報を医師と正確に共有できることで、信頼関係が築きやすくなり、安心して診療を受けられます。
・コミュニケーション: 口頭での説明に自信がない方や、病名や薬の名前を正確に覚えていない方でも、マイナ保険証があれば情報が正確に伝わります。
・時間の短縮: 細かい病歴などを説明する手間が省けるため、診察そのものに集中できます。
「医療情報取得加算」は、単なる医療機関の収入増を目的としたものではありません。マイナ保険証を通じて患者さんの医療情報を活用することで、医療の質と安全性を高め、患者さんにとってより良い医療を実現することを目的とした重要な制度です。患者さんの過去の医療情報を正確に医師が把握できることによって、無駄な検査や重複した薬の処方を避け、より安全で効果的な治療を受けられるようになります。私たちがマイナ保険証を利用することは、自分自身の健康を守るだけでなく、医療全体の効率化と質の向上にも貢献することにつながります。医療のデジタル化が進むことで、医師と患者さんとの信頼関係が深まり、より迅速で適切な診療が可能になるのです。また、医療機関がWEBサイトに医療情報取得加算の詳細を記載する義務があることは、患者さんにとって非常に大切なことだと感じます。この情報が公開されていることで、患者さんは自分の医療情報がどのように活用されるかを知ることができ、安心して診療を受けることができます。医療機関の透明性が高まることは、患者さんの信頼を得るためにも重要であり、医療の質向上にもつながると考えます。
■WEBサイトへの記載義務について
「医療情報取得加算」を算定するには施設基準を満たしてなければなりません。施設基準は以下です。
[施設基準]
1.電子情報処理組織を使用した診療報酬請求を行っていること。
2.オンライン資格確認を行う体制を有していること。
3.次に掲げる事項について、当該保険医療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に掲示していること。
ァ.オンライン資格確認を行う体制を有していること。
ィ.当該保険医療機関を受診した患者に対し、受診歴、薬剤情報、特定健診情報その他必要な診療情報 を取得・活用して診療を行うこと。
上記の通り、「医療情報取得加算」を算定する医療機関は、これらの情報を自院のウェブサイトにも明示する必要があります。これは、患者に対して医療機関の体制や診療の質に関する情報を分かりやすく提供することを目的としており、厚生労働省が定める施設基準の一環として位置づけられています。したがって、ウェブサイトを運用している医療機関においては、これらの情報を掲載していない場合、施設基準を満たしていないと見なされ、加算の算定が認められない可能性があります。ウェブサイトに掲載されているかどうか、確認しましょう。