■日本の農業
TPPにより、日本の農業は大きな打撃を受けるのではと懸念されている反面、日本の高品質な農作物は海外で売れるという評価もあります。そこで日本の農業の現状はどうなっているのかを調べてみました。
まず農業就業人口ですが年々減り続け、平成27年は209万人。そのうち65歳以上が132万6千人で平均年齢は66.3歳です。また平成26年の新規就農者数は57,700人で、そのうち49歳以下は21,900人でした。他の産業に比べてかなり高齢化しており、数年経てば平均年齢が70歳近くになるかもしれません。
さらに日本の農業は生産性が低いとも言われています。表にあるように世界の主要国と比較すると日本の農業従事者1人あたりの農業生産額はかなり低く、1人あたり農用地面積も非常に小さいことがわかります。これから海外の農産物がたくさん入ってくることが予想されますが、これに対抗するには、補助金だけではなく大きな構造改革が必要だと言われています。
図:農業従事者1人あたりの農業GDP(上位20国)及び農用地面積
出典:大和総研 日本の農業の効率性改善の鍵はIT
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■スマート農業
そのヒントになるのがスマート農業です。
ところで、スマート農業をご存知ですか?
情報通信技術やロボット技術を活用することで、農作業の効率化や品質の向上等を図るものです。因みにスマートは英語のsmartで、賢いという意味から、この名前がついたそうです。
農林水産省はスマート農業の実現によって、農業従事者の高齢化や生産性の低さの改善、食料自給率のアップ、そして農業を魅力あるビジネスにしていこうという方針です。
「スマート農業の実現に向けた研究会」の中間報告によると、その将来像は下記のようになっています。
①超省力・大規模生産を実現
②作物の能力を最大限に発揮
③きつい作業、危険な作業から解放
④誰もが取り組みやすい農業を実現
⑤消費者・実需者に安心と信頼を提供
図:スマート農業の将来像
出典:「スマート農業の実現に向けた研究会」検討結果の中間とりまとめ
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そしてスマート農業がもたらす新たな日本の農業の展開として下記の内容が挙げられています。
①農業構造の改革を技術でサポート
②やる気のある若者、女性等が農業に続々とチャレンジ
③担い手のビジネスチャンスを拡大
④品質と信頼で世界と勝負する農産物を生産
⑤新たなビジネスの創出・展開
図:スマート農業がもたらす新たな日本農業の展開
出典:「スマート農業の実現に向けた研究会」検討結果の中間とりまとめ
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スマート農業を取り入れることによって、質の高い農産物をより多く生産することが可能になります。
オランダはいち早くスマート農業に取り組んだ国ですが、2014年の統計によると農産物の輸出額がアメリカについで第2位でした。日本は53位です。農産物の輸出大国というとアメリカ、オーストラリア、ブラジルなどの広大な国土を持つ国をイメージしますが、オランダの国土面積は日本の約50分の1、耕地面積は日本の約4分の1です。また農業就業人口は約43万にと日本の約5分の1です。いかにスマート農業が大きくプラスに働いているかがわかります。
図:世界の農産物・食料品 輸出額ランキング
出典:グローバルノート-国際統計より
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また、農地や農村を維持することは、景観維持につながり、スイスの例でもわかるように素晴らしい観光資源になっています。日本においても北海道の美瑛町は「丘のまち美瑛」として農地を観光資源にしています。数ある北海道の観光スポットの中で第4位にしているサイトもありました。訪日外国人も数多く訪れているようです。
スマート農業は、農業そのものを活性化させ、農村も元気になり、観光客も増えるというプラスのサイクルを生み出すのではないでしょうか。
写真:ケンとメリーの木
出典:美瑛時間
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