物流の2024年問題

物流の2024年問題
asahi 85

トラックドライバーの長時間労働是正のため、2024年4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されます。

国土交通省の調べによると、物流は、貨物1件当たりの貨物量が直近20年で半減する一方、物流貨物件数はほぼ倍増。物流の小口多頻度化が急速に進行しています。

一方厚生労働省の調べでは、トラックドライバーは、全産業に比べ、年間労働時間は約2割長く所得額は5~10%ほど低い水準となっています。有効求人倍率は約2倍と人手不足感が強く、平均年齢についても全産業に比べ4~6歳高くなっています。

実際サービス業調査では、今年7月の時点で60%が1年前より「人手が不足している」と回答。この春の異動期に受注抑制を行った企業は46.7%で、来年24年春も40.0%が予定をしています。要は待遇のいい業界への転職が増えていると考えていいのだと思います。どの業界も待遇改善に努めないとさらに人手不足が加速していくということです。

現実問題として、労働力不足による物流需給がさらに逼迫する恐れがあり、コロナ前の2019年比で最大14.2%(4.0億トン)の輸送力不足が起こると試算され、さらに2030年には34.1%(9.4億トン)の輸送力不足が懸念されるそうです(株式会社NX総合研究所試算、2022年11月11日)。

政府は経産省・国交省・農水省を事務局として2022年10月に「事業者向け定量アンケート」を実施し「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を開催しました。

この検討会では荷主、事業者、一般消費者一体となって 我が国の物流を支える環境整備について関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって総合的な検討を行うため令和5年3月31日に「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を設置、同年6月2日に第2回を実施し、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容について抜本的・総合的な対策をまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」を決定しました。

この「政策パッケージ」に基づく施策の一環として、経済産業省、農林水産省、国土交通省の連名で発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上にむけた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定し「ガイドライン」の遵守と業界特性を踏まえた2023年内の自主行動作成について、西村経済産業大臣より呼びかけを行ったそうです。

「ガイドライン」には、トラックドライバーが現在、商慣行で行っている荷役(バラ積み・バラ下ろし等)を荷主がパレット化。荷待ち時間、2時間以内ルール(1時間以内努力目標)を設定。さらにバース予約システムの導入や異業種企業の混載(例;飲料⇒重量オーバー/カップ麺⇒積載容量オーバー、各々を同一車両に混載することで解決)で効率化する等の対策が記載されています。その他、民間企業ではいろいろな取り組みが始まっています。サカイ引越センターでは運転免許を持たない学生にも採用枠を広げて免許合宿への支援をしたり、アート引越センターでは、AIを導入して見積書を出すシステムを開発したりしているそうです。

荷主企業がその意識を変えてこれまでの商慣行を是正し、「ガイドライン」を遵守することによってこの問題は解決されるということでした。